
バー、飲料業界のアジア市場の中心地として進化を続けるシンガポール。今やアジアに留まらず衆目を集めるこの地で、3月3日・4日に「Bar Convent Singapore (BCB Singapore) 2025」が開催されました。世界中のスピリッツブランドやプロフェッショナルが情報と交流を求めて集まった最新トレンドが並ぶ会場の様子や、熱く盛り上がった会場外でのポップアップイベントなど、三和酒類のブースや同社開催のイベントに焦点を当ててレポートします。
文・構成:Contentsbrain
アジアのカクテル文化をリードする都市、
シンガポールから未来を探る2日間
世界中のバー関係者が集まるBCBの会場エントランス(写真提供: BCB Singapore 2025)
バーおよび飲料業界最大のトレードフェア「Bar Convent Berlin (BCB)」はバーオーナー、バーテンダー、メーカーなど飲料業界に携わるプロフェッショナルがアイデアや最新トレンドを共有するイベントです。ドイツ・ベルリンでスタートし、ニューヨーク、ロンドン、サンパウロへと展開。2023年にはシンガポールで初開催され、アジア市場向けの新たなプラットフォームが立ち上がりました。
本記事でレポートするのは、2025年3月3日・4日に行われた2回目となる「BCB Singapore」。アジア市場のハブであるシンガポールのマリーナベイ・サンズに、世界36の国と地域から延べ2,300人を超えるプロフェッショナルが集結しました。
イベントでは、展示会、スピリッツやカクテルのテイスティング、教育セミナー、ネットワーキングセッションなどのプログラムが目白押し。初日はお昼過ぎから多くの来場者が目当てのセミナーやテイスティングのために会場を訪れました。センターステージやワークショップでは、バーのチームづくりやリーダーシップ、長く続くビジネスの構築、ブランド戦略などをテーマに実践的なアドバイスが得られる講演が行われました。また、アガベスピリッツを中心に、ホワイトラム、泡盛、本格焼酎のテイスティングセミナーも開催され、試飲を楽しみながら活発な意見交換が行われました。
2日目には、初日の夜に行われたポップアップイベントで交流を深めた関係者たちがブースを訪れ、新たなつながりを形作る様子が見られ、業界のさらなる発展を予感させるような活気に満ち溢れていました。
至高のカクテルと交流のひととき
イベントの三和酒類出展ブースでは、本格焼酎の「iichiko彩天」、「いいちこシルエット」、「いいちこスペシャル」、スピリッツ「WAPIRITS TUMUGI」のテイスティングを行いました。また、本格焼酎の中でも麹由来のフレーバーをいかし、カクテルベースに適した高アルコール度数の蒸留酒「WA-SPIRITS」商品である「iichiko彩天」や「WAPIRITS TUMUGI」を使用した3種類の特製カクテルを提供しました。
初日に腕を振るったのは、シンガポールで人気のバー「Cat Bite Club」のオーナーバーテンダーJesse Vidaさん。アガベや米を原料としたさまざまなスピリッツの啓発にも熱心で、焼酎への造詣の深い「Cat Bite Club」らしい、麹由来の風味が存分に感じられるカクテルが提供されました。日中開催のイベントに合わせてつくられたレシピは軽やかで飲みやすく、訪れた人々との会話も弾んでいました。
「BCB Singapore 2025」初日、「iichiko彩天」のボトルが並ぶ三和酒類ブースに立つ「Cat Bite Club」のJesse Vidaさん(画像のボトルは旧デザインのものです。現行商品とはラベルや形状が異なります。)
2日目は同じく「Cat Bite Club」のGabriel Loweさんがブースに立ち、焼酎・麹を使った蒸留酒そのものの味わいと、カクテルベースにした際に感じられる麹の豊かなフレーバーの魅力を、来場者に紹介しました。Gabrielさんは、「本格焼酎のユニークな点は、単式蒸留でつくられることで原料の個性がはっきりと表れる風味です。それが他のスピリッツにはない強みであり、カクテルの世界にも新しいひらめきを与えてくれます」と語りました。
三和酒類のブースで提供された「iichiko彩天」のカクテル。WA-SPIRITSの特徴である麹由来のうまみを活かした爽やかな味わい
また、この日は会場内のテイスティングコーナーにて、日本酒造組合中央会による本格焼酎のセミナーも行われました。参加者は本格焼酎の基本的な製造方法について学びつつ、蒸留方法や麹の種類による味や香りの違いを体験。それぞれの特徴に合わせたおすすめの飲み方も紹介され、日本特有の蒸留酒である焼酎に馴染みのない現地の方に向けて、理解を深めていただく貴重な機会となりました。
●Cat Bite Club(Jesse Vidaさん、Gabriel Loweさん) 住所:75 Duxton Rd,Singapore 089534
前夜の贅沢なひととき「FRIENDS OF MANHATTAN: MEGA TAKEOVER」
今回三和酒類は、会場外でもさまざまなポップアップイベントを実施しました。
BCB Singapore 2025前夜には、コンラッド・シンガポール・オーチャードにあるバー「Manhattan」にて、特別イベント「FRIENDS OF MANHATTAN: MEGA TAKEOVER」を開催。
イベントは前後半に分かれ、前半はニューヨーク「Bar Goto」の後藤健太さん、京都「Bee’s Knees」の有吉徹(ありよし とおる)さんと山本圭介さん、福岡「Bar Sebek」の大津麻紀子さんが登場。後半にはニューヨーク「Angel’s Share」の今田恒孝(いまだ つねたか)さん、フォーシーズンズホテル東京大手町「VIRTÙ」の木村グラハムさん、沖縄「El Lequio」の遠藤日葉里(えんどう ひより)さん、さらに「El Lequio」が属するSG Groupのファウンダー後閑信吾(ごかん しんご)さんがカウンターに立ちました。「iichiko彩天」、「いいちこシルエット」、「WAPIRITS TUMUGI」をベースにしたカクテルはどれもバーテンダーの個性に溢れ、「WA-SPIRITS」が織りなす世界観の広がりを感じさせます。
「Bar Sebek」大津麻紀子さんによる「RI<->KYU 」。iichiko彩天をベースに抹茶とキュウリを使用した爽やかなカクテル
iichiko彩天とフルーツを合わせた南国感あふれるカクテルを3種披露した後閑信吾さん
イベントへの関心の高さを裏付けるように、シンガポール国内外の多くのバーテンダーたちが「Manhattan」を訪れ、バーカウンターの前に列をつくりました。カクテルを味わいながら、ベースに使用されている焼酎に関する質問や感想を熱心に伝える姿が印象的でした。さらに、記念撮影やサインを求める場面も見られ、店内全体が熱気と興奮に包まれていました。世界で活躍する日本人バーテンダーたちが一堂に会する贅沢なイベントは、翌日からの本格的なBCB開催に先駆けてシンガポールの街を盛り上げました。
「FRIENDS OF MANHATTAN: MEGA TAKEOVER」に登場したバー
●Bar Goto(後藤健太さん) 住所: 245 Eldridge St. New York, NY 10002, USA
●Bar Sebek(大津麻紀子さん) 住所:福岡県福岡市博多区中洲4-1-12
●Bee’s Knees(有吉徹さん、山本圭介さん) 住所:京都府京都市中京区紙屋町364 マツヤビル 1F
●Angel’s Share(今田恒孝さん) 住所:45 Grove St, New York, NY 10014, USA
●VIRTÙ(木村グラハムさん) 住所:東京都千代田区大手町1-2-1 フォーシーズンズホテル東京大手町39階
●El Lequio(遠藤日葉里さん、後閑信吾さん) 住所:沖縄県那覇市安里1-3-3 安里家ビル1FB
●Manhattan 住所:Conrad Singapore Orchard level 2, 1 Cuscaden Rd Singapore, 249715 Singapore
初日夜に開催された「DC Bar Take Over」
BCB Singapore 2025初日の夜。本会場でのイベント終了後には、50Best Bar Asiaにランクインするシャングリ・ラ ホテル内の「Origin Bar」にて、三和酒類主催によるイベント「DC Bar Take Over」を開催しました。50Best Bar North Americaにランクインする「Service Bar」のGlendon HartleyさんとChristine Kimさん、そして「Allegory」のDeke Dunneさんが登場し、「iichiko彩天」を使った個性豊かなカクテルを披露しました。
「Origin Bar」も含め、それぞれチームワークの良さと高いホスピタリティーで知られるバーの共演というだけあって、隅々まで気配りが行き届いた心地よい空間が生まれ、訪れた人々の間で活発なコミュニケーションが交わされていました。
「Allegory」、「Service Bar」、「Origin Bar」3店舗のバーテンダーがカウンターの中に並ぶ
DC Bar Take Overに登場したバー
●Allegory(Deke Dunneさん) 住所:1201 K St NW #1, Washington, DC 20005, USA
●Service Bar(Glendon Hartleyさん、Christine Kimさん) 住所:926-928 U St NW, Washington, DC 20001, USA
●Origin Bar 住所:Shangri-La Hotel Lobby Level, Tower Wing, 22 Orange Grove Rd, Singapore
2日目の夜。荘厳な「Atlas」で、レジェンドのクラシックカクテル
「BCB Singapore 2025」が閉幕し、締め括りとなった2日目の夜は、50Best Barの上位にランクインするシンガポールの名店「Atlas」にて、東京・銀座「BAR HIGH FIVE」のオーナーバーテンダー、上野秀嗣(うえの ひでつぐ)さんがカクテルを提供する特別イベントを三和酒類が開催しました。一般社団法人 日本バーテンダー協会の会長であり2023年に黄綬褒章⋆1を受章した “レジェンド”の上野さんがこの日披露したのは、日本のスピリッツを使った、再構築を続けている独自スタイルのクラシックカクテル。Japaneseにちなんで「なんでも最初をJにする」シリーズのユーモア溢れるネーミングは、日本国内外のお客様に好評を博しています。
今回は「iichiko彩天」を使用した、ホワイトレディの日本版「ジャパニーズレディ」やネグローニをもとにした「ジェグローニ」を提供。また、マティーニのルーツともいえる古典的なカクテルマルチネスを日本風にアレンジした新作の「ジャルチネス」も披露されました。荘厳な雰囲気の「Atlas」には、多くの人々が上野さんの技と魅力を求めて訪れ、イベント終了時間ギリギリまで深い味わいを堪能していました。
⋆1黄綬褒章:農業、商業、工業等の業務に精励し、他の模範となるような技術や事績を有する方に天皇より授与される日本の栄典(褒章)の一つ。
「Atlas」のイベントでカクテルを振る舞う上野さん
iichiko彩天を使用した「なんでも最初をJにする」シリーズのカクテル。右から「ジャルチネス」「ジャパニーズレディ」「ジェグローニ」
●BAR HIGH FIVE(上野秀嗣さん) 住所:東京都中央区銀座5-4-15 エフローレギンザ5ビル B1F
●Atlas Bar 住所:Ground floor, 600 N Bridge Rd, Parkview Square, Singapore
焼酎の未来を見据えた挑戦
焼酎が世界での存在感を確立しつつあるスピリッツであることが感じられた「BCB Singapore 2025」。焼酎ベースの新しいカクテル体験を求める人で賑わう三和酒類のブースを見て代表取締役 西和紀(にし かずのり)は、未来を見据えた挑戦について次のように語りました。
「焼酎にとってのバーテンダーは、ワインにとってのソムリエのような存在です。彼らの技術と創造性が、焼酎の可能性を広げると同時に、お客さんに特別な体験を提供してくれています。ランキング上位に入るバーには、提供されるカクテルが優れているだけでなく、スタッフの一体感が作り出す居心地の良い空間であるという共通点があります。それが人の心に響き、また味わいたいと思わせるのです。
米国をはじめ、ヨーロッパやアジアでも、焼酎がスピリッツ市場に受け入れられる兆しが見えてきました。これは、焼酎の魅力を広めるために、異なる飲酒文化に寄り添いながら商品を進化させ、味わいと品質に妥協しない姿勢を貫いてきた結果です。私たち焼酎メーカー各社が地道に取り組んできたことが実を結びつつあり、『取り組んだ分だけ成果が出る』ということを改めて実感しています」
その言葉には、スピリッツ市場における焼酎の価値を再定義し、世界に広げる挑戦を続ける情熱と、焼酎の未来にかける思いが込められていました。