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トップパーテンダーに聞く麹の酒「WA-SPIRITS」の魅力

作成者: WA-SPIRITS|2025/06/16 16:28:07

2024年72126日、米国ニューオーリンズで開催されたカクテルの祭典「Tales of the Cocktail® 2024」。イベント期間中、7月23日~25日の3日間、iichiko USAは「International House Hotel」1階のレストラン「Kenji」を貸し切り、iichikoバーに模様替えして、世界のトップバーテンダーをお招きして、「iichiko」を使った素敵なカクテルを提供しました。この千載一遇のチャンスに、トップバーテンダーの皆様に「iichiko彩天」や本格焼酎というものの魅力、それらを使った新しいカクテルの可能性などを伺いました。iichikoバーでは「iichiko彩天」や「いいちこシルエット」などを使ったカクテルを各人3品ずつお客様に提供されましたが、各インタビューの中で1品ずつカクテルの写真を披露します。


⇒前編「米国最大級のカクテルイベントで印象付けられる焼酎カクテルの存在感」

 

 

文:鈴木昭 / 写真:三井公一 / 構成:Contentsbrain

 

本格焼酎って水とかを足すと元々の味わいがさらに開いてくるんです

百瀬ジュリアさん
Bar「kumiko」オーナーバーテンダー

米国のお客様に本格焼酎を説明するには麹についての理解を促すことが重要だと思います。Barkumiko」では最初にテイスティングメニューを出すんですけれど、食事を始める前にお茶と七味とふりかけ、もずく、のり、そして麹をお皿に出して、ひとつひとつ説明します。

一番最後に麹の紹介をするんですが、和食の中で味噌汁を飲んだり、醤油を使ったことがある人ならば、既にあなたは一度は麹からできたものを食べているんですよ、という話から始めます。

麹菌は英語ではthe moldと言って「saccharification agents」、デンプンなどの複雑な炭水化物を単純な糖に変換する「糖化」の過程から、酵母が砂糖をアルコールに変える過程もお話しします。本格焼酎や日本酒独特の製法である「parallel multiple fermentation(並行複発酵)」の話も少しだけします。そこが面白いし、「parallel multiple fermentation」のおかげで、一度だけの蒸留でも度数の高いものができるんですよって。ですから独特のちょっぴり濃い味わいで、水とよく合うようなスピリッツになることをお話します。

 

ジュリアさんのこの日のカクテルの1品「WHETSTONE」

水を足しても、お茶を足しても、氷を足しても、お湯割りにしても、本格焼酎そのものの味が変わらないというか、なんと言えばいいのでしょう、味が薄くはならない、というのかな。おそらく麹でつくられているので、その中に味、テクスチャーがいっぱい含まれていて、水とかを足すと、元々の味わいがもっと強く感じられるように、さらに開いていくんですよ。

麹を使っていないスピリッツというのは、もちろんそのまま飲んでも味がしっかりあって美味しいんです。でも水を足すとなんだかソフトな感じになってしまう。そのあたりの違いが、本格焼酎のすごく特徴的なところだと思います。

 

 

百瀬ジュリア(ももせ じゅりあ)

日本・奈良市生まれ、京都市育ち。高校まで日本で過ごし、コーネル大学入学を機に渡米。学生時代にニューヨーク州イサカでバーテンダーとしてのキャリアをスタート。2010年、メリーランド州ボルチモアに移住、「RYE of Baltimore」などで経験を積み、1年半後に同店のバーメニュー考案者としても頭角を現す。2013年から3年間、シカゴのバー「The Aviary」でバーシェフ、トップバーテンダーを務める。その後 「Green River」に移り、ヘッドバーテンダーとして在職中に初のミシュランスターを獲得。レストラン「Oriole」でカクテルプログラムを担当。2018 年、共同創業者と共にBar「kumiko」をオープン。著書「The Way of the Cocktail: Japanese Traditions, Techniques, and Recipes」(2021年、共著)は2022年ジェームズ・ビアード賞(James Beard Foundation Award)受賞。
 

ヨーロッパのトップシェフたちが
麹の魅力を広めてくれた

 

後閑信吾さん
「SG Group」ファウンダー

麹を使った「iichiko彩天」はバーテンダーとして使いやすいですね。こういうものを使えば日本人のバーテンダーとしてのカクテルの表現力が広がるな、という印象です。

僕自身、以前に米国のバーで仕事をしていた頃は、アルコール度数40度台の日本のスピリッツがなかったので、日本に帰ってからアルコール度数40度の日本のスピリッツが欲しくて、「The SG Shochu」⋆の開発を進めたくらいなので。

10年くらい前にヨーロッパの人たちが、「麹」というのは面白いよと言い始めました。それから米国にも味噌とか醤油が普及していくに従って、麹も身近になっていった。その過程で、「ライスモルト」って言うのではなく、「Koji」と言うようになってきたように思います。

 

後閑さんのこの日のカクテルの1品「COLD SOBA NEGRONI」

日本酒とか本格焼酎もそうですよね。「ライスワイン」とか「ライススピリッツ」とかと言われていたものが、「Sake」や「Shochu」と呼ばれるようになったのと同じように、「Koji」と言って分かる人が米国にも増えてきた。逆に「Koji」って知らないと格好悪いよ、といった感じにすらなってきている。


たぶんこれは北欧のレストランシーンの流れが影響していると思います。北欧のレストランのトップシェフたちが麹に大注目したじゃないですか。もちろん日本食の影響も当然あるけれど、それだけじゃなくて、ヨーロッパのトップシェフたちが麹とか発酵を意識するようになったことで、米国にも味噌、醤油、麹といった言葉が普及していったのだと思います。

⋆ 「The SG Shochu」:後閑信吾さん監修のもと、カクテルでの利用を主目的として開発された麦、芋、米を原料とする本格焼酎シリーズ。2020年に販売開始。「The SG Shochu MUGI」(アルコール度数40%)は三和酒類(大分県宇佐市)、「The SG Shochu IMO」(アルコール度数38%)は薩摩酒造(鹿児島県枕崎市)、「The SG Shochu KOME」(アルコール度数40%)は高橋酒造(熊本県人吉市)がそれぞれ製造を担当。

 

 

後閑信吾(ごかん しんご)

1983年、神奈川県生まれ。2006年に渡米し、「Angel's Share」4代目ヘッドバーテンダーに就任。2012年、「Bacardi Legacy Cocktail Competition 2012」世界大会で優勝。2014年、Speakeasyスタイルのバー「Speak Low」と、バーツールショップ「OCHO」を上海市内に同時オープン。2017年、上海市内に「Sober Company」をオープン。同年、Tales of the Cocktail🄬「Spirited Awards🄬」で「International Bartender of the Year」受賞。2018年、東京・渋谷に「The SG Club」をオープン。2020年2月、SG Groupと酒造メーカー3社が共同企画する焼酎「The SG Shochu」を発売。2021年、渋谷に「ゑすじ郎 / SG Low」オープン。2022年、沖縄・那覇に「El Lequio」をオープン。2024年、ニューヨーク・マンハッタンに「Sip & Guzzle」、東京・丸の内に「SG Tavern」、をオープンした。

麹の風味はカクテルの中で
埋もれてしまうことがありません

ERIK LORINCZさん
「Kwãnt Mayfair」オーナーバーテンダー

「iichiko彩天」や本格焼酎の一番の魅力は麹に由来する特徴的な風味だと思います。多様な要素を持ちながら、カクテルのベースとして使ったときに、カクテルの中で埋もれてしまうことがありません。麹の酒である本格焼酎の特徴が芽吹いて、風味の面でとても個性的なものにします。

 

ERIKさんのこの日のカクテルの1品「LAST SWORD」

カクテルのベースの材料として使う場合、この「iichiko彩天」のアルコール度数43度というのはとてもいいと思いますよ。他の材料を加えた時に、アルコール度数が下がってしまうため、43度という高いアルコール度数の方が確実にドリンクの構成を保つ助けになるからです。


また、一般的な本格焼酎のアルコール度数20度や25度のものは、そのまま飲むこともできて美味しいし、口当たりがよくて、それはそれでいいと思いますよ。

 

 

Erik Lorincz

スロバキア生まれ。プラハ市内のスクールでバーテンディングを学び、スロバキア初のバーで約4年働いた後、ロンドンに渡り名門ホテルThe Savoyの「American Bar」の第10代ヘッドバーテンダーを務める。2010年、「ディアジオ ワールドクラス 世界大会」で優勝。2018年に「American Bar」はTales of the Cocktail®のSpirited Awards®で「Best International Bar Team」と「Best International Hotel Bar」の2部門獲得。2019年、ロンドン市内に「Kwānt」オープン。店舗は「Worlds’ 50 Best Bars」で2019年47位、2020年6位、2021年31位に選ばれ、2020年の「Tales of the Cocktail® Spirited Awards®」では「Best New International Cocktail Bar」に選出された。コロナ禍の余波で2021年に閉店したが、2023年に「Kwãnt Mayfair」として再開を果たし、2023年に「Worlds’ 50 Best Bars」拡張ランキング52位に選ばれた。

WA-SPIRITSはいろいろ
試すのがとても楽しいお酒です

Kevin Diedrichさん
「Pacific Cocktail Haven(P.C.H.)」オーナーバーテンダー

本格焼酎には発展の余地がすごくあると思います。特に「iichiko彩天」が生まれて、本格焼酎をカクテルに使う機会が広がってきました。より多くの人がこの高アルコール度数の本格焼酎をカクテルに使うようになってきているように感じます。


麹というのは、その風味や香りが他のスピリッツとは異なる特徴を持っていますよね。うま味がとても味覚を刺激するような。それがすごく素敵な組み合わせを生みます。麹の、味覚を刺激するような風味は、他のスピリッツには感じられないものです。その独特の風味があるので、いろいろカクテルづくりに試すのがとても楽しいお酒です。

 

KEVINさんのこの日のカクテルの1品「ONE THOUSAND CRANES」

実際にサンフランシスコ「Pacific Cocktail Haven(P.C.H.)」などでカクテルに「iichiko彩天」を使ってみると、反応はとてもいいですよ。カクテルという馴染みのあるものに、本格焼酎の麹特有の要素や爽やかさを加えることで、米国の酒好きたちにとっても魅力的でそそられるものになるのだと思います。

 

Kevin Diedrich

米国バージニア州生まれ。ITエンジニアを経て、2001年にワシントンD.C.のリッツ・カールトンでバーテンダーとしてキャリアをスタート。2005年からサンフランシスコでバーテンダーとしての腕を磨き、2009年、ニューヨークに移り、「PDT」や「Clover Club」などに勤務。2017年に共同創業者と共に「Pacific Cocktail Haven(P.C.H.)」をオープン。2018、2019年に「The World’s 50 Best Bars」に選出され、2020年に「Tales of the Cocktail®  Spirited Awards®」で「Best American Cocktail Bar」と「Best American Bartender」を受賞。2021年、火災で店舗閉鎖後、2022年に現在の新店舗をオープンし、再び多くのファンを魅了している。「North America's 50 Best Bars」で2024年38位、2025年16位に選出された。

 

「iichiko彩天」はスピリッツの
主要カテゴリーになる可能性を秘めていると思う

Danil Nevskyさん
「Indie Bartender」ファウンダー、バーコンサルタント

「Indie Bartender」ファウンダー、バーコンサルタントのDanil Nevskyさん

ほとんどの西洋人にとっての日本のお酒文化への入り口は往々にして、日本人ではない人が運営する粗悪な寿司レストランで飲む、粗悪な日本酒です。だいたいそうです。なので、そんな私たちにとっては、「iichiko彩天」との出合いは新しい世界を見出しているようです。


興味深いのは、私が今まで味わってきたどんな味とも異なる、とてもユニークな風味を持つこと。これはスピリッツの世界でとても重要なことです。一般的に私たちが話題にするのはたった5種類ですよね。ジン、ウイスキー、ウオッカ、テキーラ、ラム。その他の選択肢のスピリッツは主なカテゴリーから外れます。


ですが私は、特に「iichiko彩天」はスピリッツの新しい主要カテゴリーになれる可能性を持っていると考えています。これまでの主要な5種類のカテゴリーのどれとも全く類似するところがない独特の風味を持っているからです。それはつまり、独自性を確立できるということです。他の物の下に分類されない。これは超重要なことなんです。ブランド競争の中で個性を持つことは、本当に重要です。


初めて「iichiko彩天」を飲んだ時、とても驚きました。以前に本格焼酎を飲んだことはありましたが、「おぉ、遂に私好みのものが来た!」という感じでした。商品というのはつくられた国や地方の文化や人を反映するものです。そして日本の人々や、文化や食べ物は、ゆったり落ち着いている、何というか、より洗練されています。


「iichiko彩天」は、日本人でない私たちでも分かる、より積極的で強い風味を持っている。私たちは味覚や味の感じ方を変えることはできないじゃないですか。これを飲んだとき私は、「よし、カクテルに使えるアルコール度の高い焼酎だ。メインのスピリッツとして使えて、ユニークで多様な風味をもつ、ついに使えるものを手に入れたぞ」と思いました。

 

 

Danil Nevsky

ロシア生まれ。世界中のバーを巡り、各地のバーテンダーと交流し、新しいトレンドや技術についてインスピレーションを共有している。これまでにウクライナ、イングランド、スコットランド、オランダに住み、現在はスペイン・バルセロナ在住。「Indie Bartender」を提唱する。これは、伝統的なバーや企業の組織にとらわれず、個人の力でクリエイティブなプロジェクトや仕事を実現するための独立したバーテンダーの新しいあり方。ネット上に、「Indie Bartender」としての働き方やバー業界の課題、バーテンダーとしての成功ストーリーなどを積極的に投稿。バー専門誌「Drinks International」が主催する「BAR WORLD TOP 100(バー業界で影響力のあるTOP100)」で、2022年に第3位に選ばれた。2024年、Tales of the Cocktail®「Spirited Awards®」で「Best International Bar Mentor」受賞。




⇒前編「米国最大級のカクテルイベントで印象付けられる焼酎カクテルの存在感」