本格麦焼酎「いいちこ」のブランドデザイン40周年を記念して、三和酒類が2024年10月に東京・渋谷で開催した「iichiko Design Week 2024」。前日のレセプションパーティーでは、「iichiko彩天」の日本国内発売を発表。会期中のポップアップバーでは、世界で活躍するトップバーテンダーたちが「iichiko彩天」を始めとする「いいちこ」各商品を使ったカクテルを振る舞いました。
(画像のボトルは旧デザインのものです。現行商品とはラベルや形状が異なります)
文:竹内紀将 / 写真:三井公一、桂志穂、根本佳代子 / 構成:Contentsbrain
2024年10月、東京・渋谷で5日間にわたり、大規模展覧会「iichiko Design Week 2024」が開催されました。このイベントでは、三和酒類の本格麦焼酎「いいちこ」の駅貼りポスターやテレビCM、またバラエティーに富んだ製品の個性を表現するボトルデザインといった「iichiko design」に関する展示と、各製品のテイスティング、トークイベントなどにより、ブランド価値やメッセージを伝えられました。
渋谷駅周辺で各種サイネージを展開し、イベントを盛り上げた
その開幕前日、飲食業界の関係者と報道関係者らを招いて催されたレセプションパーティーで、「iichiko彩天」の日本国内発売が発表されました。
パーティーの冒頭には開会のあいさつとして、三和酒類 社長の西和紀(にし かずのり)が和装で登壇。新しく発売する製品のコンセプトを語りました。
「iichiko Design Week 2024」レセプションパーティーで開会のあいさつをする三和酒類 社長の西和紀
「麹を使った日本の伝統的酒造りの文化と技術を結集した蒸留酒である焼酎は、新しい存在意義を得るべきです。世界に通用する蒸留酒は、ウイスキーやブランデー、ラム、ウオッカ、ジン、テキーラとありますが、ここに焼酎の土俵をつくる時が来ています。今こそ麹でできたスピリッツの価値を世界に問うべきです」
この西の言葉を受ける形で、海外市場のマーケティングを担当する三和酒類 営業本部グローバルマーケティング室 室長の宮﨑哲郎(みやざき てつろう)が登壇。米国で先行発売していたバー向けの本格麦焼酎「iichiko彩天」を、2025年に日本国内でも発売すると発表し、その背景として、米国発売に先駆けた製品開発の経緯を説明しました。
資料を投影しながら世界における「いいちこ」の価値について語る宮﨑
焼酎の米国への輸出量は、ジャパニーズウイスキー、日本酒に比べ、40年前から低水準のまま。この背景には、日本と米国での飲酒文化の違いがありました。すなわち、日本では食事の場で日本酒もビールも焼酎も飲まれるのに対し、米国では日本酒やワインといった醸造酒は食事の場、ウイスキーやウオッカ、テキーラなどの蒸留酒はバーで飲むものと、はっきりと場所が分かれています。そこで三和酒類では、蒸留酒のメインストリームであるバーで、本格焼酎の飲用を啓蒙していこうと、新たな製品の開発が始まりました。
こうして2019年に米国で発売された「iichiko彩天」は、多くがアルコール度数20~25%である焼酎の常識を覆す43%という高度数で、カクテルベースにしても負けない力強い個性を持った製品となりました。
「iichiko彩天」は2020年、アジアの伝統的な蒸留酒として初めて、Tales of the Cocktail®のSPIRITED AWARDで「Best New Spirit or Cocktail Ingredient」部門のトップ10にノミネートされました。その成果として、米国に輸出されている本格焼酎における三和酒類のシェアは2019年度以降伸び続け、直近の2023年度では約65%を占めるトップシェアに成長しています。
そして宮﨑からは、「iichiko彩天」のデザインリニューアルについても言及されました。「2025年には『iichiko彩天』はデザインを一新して、バーシーンの中でバーテンダーの方々により使いやすく、店内のビジュアルにも映えるボトルで新登場します」と発表。日本の国菌である麹を使った本格麦焼酎「いいちこ」を世界にアピールする新しいスピリッツの第一弾として、「iichiko彩天」の新しいボトルを壇上で力強く掲げてご来場の皆様にお披露目しました。
宮﨑が右手に掲げたのは新生「iichiko彩天」のボトル
レセプションパーティーの後、展示スペース「iichikoを体験する(Experience “iichiko”)」でポップアップバー “iichiko Special Bar”がオープン。会期スタートに先立って、この日は特別に限定Bar「Angel’s Story × iichiko彩天」と題して、「iichiko彩天」をベースにしたカクテルが提供されました。
バーカウンターには、ジャパニーズスタイルの先駆者として世界から尊敬を集めるニューヨークの伝説的バー「Angel’s Share」から、ビバレッジダイレクターの中山敦史(なかやま あつし)さんとヘッドバーテンダーの今田恒孝(いまだ つねたか)さんが登場しました。
「Angel’s Share」のビバレッジダイレクター中山敦史さん
「Angel’s Share」のヘッドバーテンダー今田恒孝さん
サニーサイドレーン(iichiko彩天、マテ茶、グアバピューレー、ココナッツウォーター、赤味噌、はちみつ、レモン、ヨーグルト)
さらに、特別ゲストバーテンダーとして、「Angel's Share」から羽ばたき、世界的に活躍する「SG Group」ファウンダーの後閑信吾(ごかん しんご)さんと、NYの人気店「Martiny’s」など3店舗を運営する渡邉琢磨(わたなべ たくま)さんも加わりました。「Angel's Share」の “OB”と“現役”バーテンダーの夢の競演「Angel’s Story」の実現です。「Angel's Share」のオーナーの好田絵里奈(よしだ えりな)さんもNYから駆けつけ、バーテンディングを見守っていました。
トップバーテンダーとして、「SG Group」ファウンダーとして、世界で活躍する後閑信吾さん。2006年に渡米して「Angel's Share」でヘッドバーテンダー兼バーマネージャーを務めた
光り輝くトマトの木(iichiko彩天、シャインマスカット、トマト、ディル、マスティハ)
「Angel's Share」でヘッドバーテンダーを務めた後、2022年に独立。現在NYに「Martiny’s」など3店舗のバーを展開する渡邉琢磨さん
マイア イン 渋谷(iichiko彩天、柚子、パイナップル、バジルシロップ、バジルガーニッシュ)
「Angel’s Share」のオーナー好田絵里奈さんもイベントに合わせて会場を訪れた
写真左から、「Angel's Share」の今田恒孝さん、中山敦史さん、「SG Group」ファウンダーの後閑信吾さん、「Martiny’s」オーナーバーテンダーの渡邉琢磨さん
翌日からの会期中は、「いいちこ」や「iichiko design」のファンが会場を訪れました。常設展示は「いいちこに触れる(Say hi to “iichiko”)」「いいちこを知る(Get to know “iichiko”)」「いいちこを体験する(Experience “iichiko”)」の3つのエリアで構成。周遊する中で五感を通じて「いいちこ」の魅力を感じられる仕掛けで来場者を楽しませました。
「いいちこに触れる(Say hi to “iichiko”)」エリアでは、iichiko designを象徴する存在ともいえる「いいちこ」の歴代駅貼りポスターが厳選して展示された
「いいちこを知る(Get to know “iichiko”)」エリアでは、「いいちこ」の各種ボトルの実物と拡大写真が展示され、その個性的なボトルデザインの設計哲学を伝えた
「いいちこを体験する(Experience “iichiko”)」エリアは、「いいちこ」を新しい形で体験できるスペース。壁面から天井にかけて酒蔵のシズル感をイメージした水の映像が投影され、モニターには「いいちこ」の広告デザインを象徴する駅貼りポスターが代わる代わる映し出されて、来場者を「いいちこ」の世界観へ誘いました。
幻想的な空間で「いいちこ」の新しい飲酒体験を提供
ポップアップバー“iichiko Special Bar”はこのエリアの一角にあります。日替わりで腕利きのバーテンダーが登場して、「iichiko彩天」をはじめとする「いいちこ」製品をベースにした独創的なカクテルを振る舞い、連日、行列ができるほどの活況を呈しました。
腕利きのバーテンダーが日替わりのゲストシフトとしてカクテルを提供する“iichiko Special Bar”
10月8日を担当した「日比谷Bar」バーテンダーの丸山拓哉さん
「アリエス」(iichiko彩天、エルダーフラワーリキュール、パイナップルジュース、ソーダ、トニックウォーター、ブルーキュラソーシロップ)
「ハピネス」(いいちこフラスコボトル、マンゴージュース、サトウキビシロップ、大葉)
10月9日を担当した「Angel's Share」ビバレッジダイレクターの中山敦史さん
「Angel’s Share」ヘッドバーテンダーの今田恒孝さん
「サニーサイドレーン」(iichiko彩天、マテ茶、グアバピューレー、ココナッツウォーター、赤味噌、はちみつ、レモン、ヨーグルト)
「霧の日」(いいちこパーソン、グレープフルーツ、オスマンサス、レモン)
10月10日を担当したのは「Martiny’s」オーナーバーテンダーの渡邉琢磨さん
「ミュール」(iichiko彩天〔カレー彩天〕、リンゴ、レモン、ジンジャーエール、ベイリーフ、オリーブ)
「カプリ―ゼ」(いいちこシルエット、トマトウオーター、グレープフルーツジュース、バジルシロップ、ライム、ミルク)
10月11日を担当した「The SG Club」ヘッドバーテンダーの徳満亮太さん
「ダーティモンブラン」(iichiko彩天、コニャック、栗、味醂、どぶろく)
「スーパーハイボール」(いいちこスーパー、カカオ、蕎麦、炭酸)
10月12日を担当した「Bar BenFiddich」オーナーバーテンダーの鹿山博康さん
「麦とアプリコットのビターカクテル」(iichiko彩天、アプリコットビターリキッド、ドライアプリコット)
「豆淋酒いいちこスペシャル」(いいちこスペシャル、日本酒と餡子〔あんこ〕の上澄液、山椒、黒豆)
本格麦焼酎「いいちこ」のこれまでを振り返り、これからを展望した展覧会「iichiko Design Week 2024」。飲むことはもちろん、広告やボトルのデザインを含めた酒づくりの背景を知っていただくことで、来場者に「いいちこ」の魅力を伝えました。そのレセプションパーティーで発表された「iichiko彩天」の日本国内発売は、本格焼酎の価値を再定義して世界のスピリッツ市場の未来を開拓しようとする三和酒類の現在の姿勢を象徴する出来事といえます。